女一人で海外出張: 後でゾッとしたこと

2017年7月20日木曜日

後でゾッとしたこと

 アルゼンチンの田舎町で車を止めて休憩していると、そこに、人懐こい犬がいました。ブンブン尾っぽ振ってる。「かわいいな~」と撫でていると、地元のおばちゃんが必死の形相で何か叫んでいます。言葉の中で、頻繁に、「アンタ!アンタ!」という単語が聞こえます。どうやら“犬に触るな!離れて!”と言ってるようでした。

 狂犬病のことを心配してくれてるの?それなら、この犬は狂犬病持ってないでしょ。大人しいし。「大丈夫だよ。」と言って撫でていました。

それでも、おばちゃんはずっと「アンタ!アンタ!」と言い続けている。あまりに必死なので、とりあえず、犬から離れました。

その時、おばちゃんのジェスチャーから、
“犬から・・・何やら小さいのが飛び出して・・・それが腕や顔にくっ付く。”
“寝込んで・・・死ぬ??”
っぽいことが読み取れました。なんなんだろ?

 車に揺られている時、それは突然閃きました。スペイン語ではHは発音しないことを。
おばちゃんの「アンタ!」は、Antaではなく、Hantaなのでは!?って、ハンタウイルスじゃん!!!

 ちょっと待って。北米と南米のハンタウイルスって、致死率恐ろしく高くなかったっけ?ちょっと、ちょっと、ハンタウイルスの感染経路って、何だっけ?おばちゃんのジェスチャーが脳裏によみがえります。

“小さい虫が、犬から人に。刺されて、寝込んで、はい死亡。・・・・・・。”
ってことなの!?ノミやダニから感染するってこと??
ゾッとしました。刺されていないはず。でも、付着してないかな・・・。慌てて上着を脱いでビニル袋にしまって封をしました。

 Sabiさん。何してるの?」

突然の私の奇行に、同行のR氏が不思議そうに聞きました。

 「さっき。私、犬、撫でた。ハンタウイルス。持つ虫。付いたかも。」

返答した時の私の声は震えていたかもしれません。
R氏は表情を変えず、淡々と話します。

「ああ。ハンタウイルスね。あれ、若くて元気な人間ほど致死率高いよね。去年一緒に乗ってたチリ人Aも、ハンタにかかって、あっという間に亡くなったからね。学生だから、まだ25歳にもなってなかった。」
「普通の感染症だと、体力の落ちてる人や子供や老人の方が致死率高いけど、ここのハンタは逆なんだよね。元気な若者の方があっという間に病状が進行するね。」

うわ~。そんな情報聞きたくないよ~。(><)
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、R氏は続けます。

「一昨年だっけ?女子学生で、自称“山女”って子が一緒に付いて来たんだけど、突然高熱出して倒れたんだよね。あれ、案外ハンタだったのかな。いや~キャンプ地で倒れたもんだから、医者にもかかれないし、熱下がるまでずっと俺が看病してたよ。助かったから良かったんだけどね。」

うわぁぁぁ~実際、感染した事例、身近に結構あるじゃないですか・・・

「致死率って、どのくらい?感染経路は、空気感染?虫?潜伏期間はどのくらい?」

「さあ。」

R氏は情報量の割に、肝心な所はあっさりしています。
現地のスタッフが興味ありげに見ていたので聞いてみました。彼が言うには、

「致死率1/2。」
恐ろしく高いじゃないですか!

「感染経路は、詳細不明。ウイルスはネズミの糞に含まれ、土埃と一緒に吸い込んで感染するらしい。でも、人から人に感染することもあるらしく、もしかしたら飛沫感染するのかも。もしかしたらノミやダニの可能性も捨てきれない。」
うわぁぁぁ~さっき、犬に手舐められたよ!慌てて除菌シートで拭きました。ついでに顔も拭きました。土埃も吸い込んじゃってるよ。ここは強風が吹きすさぶ地域なので常に埃まみれだし・・・

「潜伏期間は一週間じゃなかったかな?二週間かも。まだ時間があるから大丈夫だよ。もう日本に戻っているタイミングでしょ。日本は医療が充実してるからね。」
大丈夫じゃないんだよ・・・致死率50%でしょ!感染経路が不明って所が不安だよ~。ここは荒野の中、ネットに繋げないから検索もできないし。それに、一週間後はまだ南米にいるし、都市部だけど。

不安なまま現地を過ごし、街に戻ると、仕事のまとめよりも、皆での食事よりも、先ずハンタウイルスの検索をしました。それによると、

“感染経路は飛沫感染。宿主となるのはげっ歯類の中の特定のネズミ。潜伏期間は数日から6週間!多くは2~3週間で発症する。南北アメリカ大陸のハンタウイルスの場合は症状が肺に来て死亡率も高い。”
でも、よく読むと、未だ詳細は良く分かっていないらしい。
全く、ホッと、できない。

案外、証明されていないだけで、おばちゃんが必死に伝えていたように、犬等の哺乳類に付着するノミやダニからも感染するんじゃないのかな??犬はネズミを捕るだろうし。

教訓:
  • 海外に出たら哺乳類には近づかない。
  • 動物だけに限らず、できれば土や泥や水にも触れないで過ごしたい。
  • 虫よけ対策をしっかりする。(ホテル選びの段階から、野外調査、虫よけスプレー(蚊だけでなくノミやダニを防ぐ)など。)
  • 日本製の高機能マスクは沢山持参した方が良い。ウイルスやpm2.5が防げるくらいの機能は欲しい。
p.s. 結局、ウイルスには感染していませんでした。

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