女性の一人旅に有効と噂される、結婚指輪(ダミー含む)。その結婚指輪が引き起こした海外での一騒動です。
その国に入国するのは、当時、未だ2回目でした。東南アジアのムスリムの国。と言えば、おのずとその国は絞れてきますね。そう、インドネシアでの話です。(もう、昔の話なので国名を挙げても良いかなと。)
その国に入国するのは、当時、未だ2回目でした。東南アジアのムスリムの国。と言えば、おのずとその国は絞れてきますね。そう、インドネシアでの話です。(もう、昔の話なので国名を挙げても良いかなと。)
参与と、私と、ビジネスマンS氏の三人で出張に行きました。長い入国待ちの列に並び、溢れ出る汗を拭き拭き、やっと私の番がやって来ました。これを過ぎれば荷物を受け取って、ようやく空港を出られます。私の前に参与が入国を済ませ、こっちを見ていました。私の後にはS氏。さあ、入国管理官の質問です。
「何日滞在するの?」「出張の目的は?」
定番の質問です。普通に答えて、さて、スタンプ押されて終了かと思いきや、
「あなたの旦那は何処にいる?」
は?
「日本です。」
私の答えになぜか不機嫌になった係官は、更に質問を続けます。
「あなたは結婚してるんだよね!?結婚指輪してるじゃないか。」
はぁ??
「はい、結婚しています。」
更に不機嫌になった係官は、質問を続けます。
「だから、あなたの旦那は何処?」
「あいつか?」こっちを見ていた参与を指さしました。指さされた参与は目を丸くします。
「・・違います。」
「じゃ、あいつか?」S氏を指さします。今度はS氏がドキリとしています。
「・・違います。」「どっちも違います!!」
「日本にいるって言ってるじゃないですか。」「私は仕事で来ているんです。」
「旦那は何処?」
「日本です。」
この不毛なやり取りを何分続けた事でしょう。
後ろに並んでいた皆様、大変申し訳ありませんでした。
後ろに並んでいた皆様、大変申し訳ありませんでした。
係官は不機嫌なまま、質問を変えてきました。
「あなたの旦那は何処で、何をしているの?今。」
え・・・?今頃は、まだ会社で猛烈仕事中のはず。
「会社で仕事しています。」
「どんな?!どんな仕事なの?!」
もう、なんなの?この意味不明な質問群。
「ここにいない主人の情報が、私の入国に、なぜ必要なんですか?」
入国係官は、突然、ハッと、何か閃いた模様。
「分かったー!こっちで会うんだろ?な?旦那は遅れて別便で来るんだな?な?」
もう、いい加減このやり取りを終えたい私は、不本意ながら彼の言葉に賛同することにしました。
「はい。はい。そうですよ。」
やっと満足した回答を得た係官は、力強くスタンプを押すとパスポートを返してくれました。
心配そうに見ていた参与が聞きます。
「Sabiさん、何聞かれてたんだい?」
丁度そこに入国審査を終えたばかりのS氏も合流しました。
「Sabiさん、随分トラブってましたね。」
ターンテーブルの前で荷物待ちをしながら、事の顛末を話しました。
参与が笑って教えてくれました。
「イスラムの国じゃな、既婚女性が旦那無しで一人で海外に出るなんて考えられないからだよ。」
「でも、インドネシア人のN女史は、スカーフ被っている敬虔なムスリムですよね。旦那も子供もいて、毎月、世界各地に飛び回っているじゃないですか?この国でも普通の事じゃないんですか?」
「まだ、稀だよ。これから変わって来るんだろうけどな。女性の強い国だけど、まだ一般的ではないんだろ。」
「そういう時はな、真面目に答えないで『日本じゃ、1人の女性が旦那を4人まで持てるんだぜ~』って言ってやれば良かったんだよ。はっはっは!」
参与はご機嫌。私は一人、何か割り切れない気持ちが残りました。
このトラブルは、入国係官が私の結婚指輪に気付いたことで始まった事ですが、私の中の常識は他の文化の非常識だと知った一件でした。
結婚指輪が一人旅の女性を守るアイテムになれば良いのですが、このように、場所によってはトラブルの元になります。
🍀 🍀 🍀 🍀 🍀 🍀
その一年後、今度は旦那を連れて入国した時のこと。私は仕事でとったマルチビザがあり、主人は観光用のシングルビザで入国審査に挑みました。
『どーだ!今度は旦那連れだよっ。文句ある?』と自信満々でしたが、またしても入国係官に引き止められました。
「あなたはマルチビザで、どうして旦那はシングルビザなんだ?」
・・・またかい。またこの類の質問が来るとは。でも、この時の私はもう慣れていました。係官の質問の意図するところが分かったからです。
「ここインドネシアは私の仕事場。その仕事場を見せるために旦那を連れて来たのよ。」
じっと私の顔を見ていた係官は、黙って我々のパスポートを返してくれました。腑に落ちない表情をしながら。
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