女一人で海外出張: 海外での診療事情(1)

2017年7月5日水曜日

海外での診療事情(1)

海外では体調管理には気を付けて来ましたが、それでも体調不良で倒れた事が何度もあります。現地の医者のお世話になったことは二度。いずれもインドネシアでした。

確かに、インドネシアは未知の細菌やウイルスが溢れていて、日本よりもそれらに接する機会が多いかもしれません。しかし、必ずしもインドネシアが体調を崩しやすい国ではないと思います。海外に行くようになった頃、良く通っていたのが、たまたまインドネシアだったので、未だ体調管理に慣れていなかった事も大きかったと思います。


 当初、インドネシアに行く度にお腹を壊していました。どうやったらお腹を壊さないか、原因を探り出し、対策をあみ出したのが、以前まとめた海外での体調管理です。

 それでも、二度倒れ、医者に運ばれたインドネシア。恐るべし。

初めてお医者さんに運ばれた時は、謎の熱病でした。今でもその正体が分かりません。インドネシアに着いて、翌日カリマンタンに飛び、その日の夕方、異常を感じました。頭痛がするので熱中症かと思い意識的に水をとるようにしていました。次第に頭痛は苛烈になり目を開けていられなくなりました。加えて倦怠感、関節痛もしてきました。密林の中で動けなくなくなることを懸念し、一人ボートに戻り日影で横になっていました。その夜、ホテルに戻ってから発熱があり、明日まで治ってくれと祈りつつ、明朝まで様子を見る事にしました。

翌朝、願いもむなしく、症状が全く改善していません。運良く日本人複数人での出張だったので、ホテルの部屋で休ませてもらいました。夕方まで休んでいると、不思議なくらい体が楽になり、ベッドから立ち上がれるまでに回復しました。帰って来た人達から「食べなきゃだめだ。」と言われたこともあり、調子が良かったので、皆と食事にでかけました。

異変はレストランで起こりました。突然、寒気がし、全身が冷えるのを感じました。顔、特に顎は感覚がないくらい冷たくなっていました。首筋を冷や汗が流れるのが分かりました。“これはマズイことになる”と感じ、ホテルに戻る事にし、一人レストランを後にしました。

歩道を歩き始めてまもなく、視点が合わなくなり、凍える体が動かせないように、体の自由が利かなくなり、歩道に崩れ落ちました。・・・その時、聞こえなくなる寸前の私の耳に、同行者の一人K氏の叫び声が聞こえたのです。「うあああ!Sabiさん!大丈夫ですか!」

ブラックアウト寸前の私の目に見えたのは、後から走って来たK氏の、小枝のように細い二の腕。そして、その腕に支えられたお陰で、私は地面への激突を免れたのです。ひょろひょろとして、間の抜けた感じがして、いじられキャラだったK氏、その小枝のような二の腕は私を救ってくれました。

 私と長年一緒にインドネシアの旅を続けてきたK氏こと小枝君が言うには、私の様子が明らかにおかしかったので、心配して後から追いかけて来たのだそうです。
“ありがとう小枝君!(T-T)そして、いつも笑い話のネタにしてごめんね。あなたはやっぱり男だよ。”
しゃべられない私は心の中で感謝しました。

体が動かせるようになるまで暫く歩道にうずくまり、皆が手配してくれた車で、お医者さんに運ばれました。
着いたそこは、病院ではなく、一軒の民家でした。
明らかに、民家。どう見ても、民家。

門をくぐると屋根と柱だけのオープンエアー。戸棚にはラベルの付いた瓶が並び、机、そしてテーブルとソファ。売店のようなガラスケースの中にポカリスエット。そして片隅に布の敷かれた診察台。そこは、現地カウンターパートが名医で人格者だと勧めるお医者さん宅でした。
(後日分かった事ですが、インドネシアでは腕の良いお医者さんは、午前中に病院で勤務し、午後は自宅で診察をするというダブルワークのスタイルをとるのだそうです。確かに、人格者だろうな、と思わせる方でした。)

さて、そのオープンエア―に置かれている診察台に寝かされると、降りだしたスコールの雨粒が風にあおられ、私の顔にかかります。雨粒に濡れながら、カウンターパートのスタッフが一通り症状を説明している様子を見ていました。
と、お医者さんは私の方に向き直って質問しました。

医者:「お腹痛い?」
私:「いいえ」
医者:「御飯食べた?」
私:「いいえ。今日は水だけです。」
 医者は、ああ、分かったという顔をして、こう言いました。
 「貧血だね。」「ご飯食べなきゃだめだよ。」
 私:「でも、熱が出て、苦しくて、目も開けられないし、起き上がれない。ましてや食べることなんて、できなかったんです。」「一時楽になったんですけど、またぶり返して・・」
医者:「食べなさい。無理ならポカリスエットという良い物があるんだから、これを飲みなさい。」
私:「・・・」

つまり、
お医者さんの診断結果:貧血。
お医者さんの処方:ポカリスエット2本。
診療費:およそ200円なり。

ポカリスエット2本もらって帰って来ましたよ。
帰りの車の中で、電話で仲間に結果を連絡する現地カウンターパートのスタッフと日本人スタッフ達。
「Sabiさんの不調は“空腹による貧血”だそうです。」
「ええ。ポカリ飲めば治るっぽいです。」
って、だから、それは違うって言ってるじゃん!

二日後、ジャカルタに戻って来ると、K氏から連絡を受けたK氏と同じ会社のM氏がホテルのロビーで待っていました。何だろ?

M氏:「この度はすみませんでした。Sabiさんの高熱の原因は私にあるんです。」

は?

M氏:「Sabiさん一行が到着した日、一緒に晩御飯食べに行きましたよね。実はあの時、私も同じような症状で熱があったんです。今回K氏から連絡を受けて、症状がそっくりだったもので・・・私が感染源だったのではと思いまして。」
M氏:「丸一日高熱が出て動けなくなり、その後は比較的楽になったでしょう?」

えええ~!その通りだよ~

M氏:「・・・実は、そう言う私も、H氏に染されたから、そう思うんです。H氏と一緒に仕事していた時、H氏も体調悪かったんですよ。」

 えええ~!!じゃ、なんですか?H氏→M氏→Sabiと、瞬く間に連鎖的に感染したってこと!?ものすごい感染力じゃない!?

 しかも、その”一日熱”は、人を選ぶようなんです。M氏と晩御飯を食べに行った時、私は助手席に乗り、M氏とK氏、同僚のT君(初インドネシア)の3人は後部座席に乗っていました。晩御飯の席でも男性3人で仲良く話していました。私はあまり会話に参加せずにいました。それなのに、M氏から感染したのは最も遠くにいた私だけ。

 その後、観察していると、西ジャワ周辺にはこの一日熱の病原体がいるようで、ビジネスマンS氏は2009年に、その後輩C氏は2010年に、ジャカルタ郊外の村で同じ症状で倒れています。

 かつ、一度罹患すると抗体ができるようで、S氏とC氏が倒れた時、同行していた私は無症状でした。

 一体、何だったんでしょう?この一日熱って??これがもし感染症だとすると、潜伏期間わずか一日。蚊に刺されていないのでデングでもマラリアでもありません。強烈な症状でしたが、一日で治るんです。

❋ ❋ ❋ ❋ ❋ ❋

帰国後、職場の女性スタッフが心配しており、業務出張では海外医療保険に入っているから精算してと言ってもらいましたが・・・。200円。ちゃんと請求するよう言われたので、領収書と明細書の翻訳を付けて保険会社に手続きをしました。

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